最高裁判所第二小法廷 昭和24年(オ)17号 判決 1949年5月21日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人弁護士一条清の上告理由第二点について。
本件控訴状に貼付すべき印紙が不足であつたが後日その瑕疵は補正されたことは前点に対する説明のとおりである。そして右補正された以上はそれまでの間に為された弁論期日、判決言渡期日の指定及びその告知は有効であること勿論である。所論は右と反対の見解に立脚しその無効なることを前提とするのであるから論旨は理由がない。
同第四点について。
しかし原判決は本件土地の中建物の敷地及び建物利用に必要な部分を除いた残地は一、前所有者金田一直太郎において後日同地上に自己の住家を建築するつもりでこの部分は何人にも賃貸せず空地として残しておいたこと、二、その後太平洋戦争勃発し右空地の部分について他から借地申入を受けるようになつたが右金田一直太郎はそれに承諾を与えず依然これを空地として残しておいたこと、しかし右空地は次第に塀が壊されその一部に防空壕が造られたばかりでなく勝手に蔬菜類を作るものもできたこと、三、訴外堀内政一は金田一直太郎の承諾を得ないのに拘らず昭和一七年中から勝手に右空地の一部約一反歩に蔬菜類を作つていたが昭和二一年中から右政一の四男で分家していた上告人において引続き単独で勝手に右約一反歩の土地を耕作してきたこと、右耕作の状況は馬鈴薯畑約八十坪の外人参、ささぎ、牛蒡、胡瓜、葱、唐黍等の蔬菜園であること、そして上告人は盛岡市農業会に加入している者ではなく、又右土地は食糧供出の対象となつたこともないものであること、等の事実を認定し、右約一反歩の土地は右認定の状況から考察すると普通の家庭菜園に過ぎず農地調整法に定められた農地に該当しないものと判断したのである、そして右認定事実は原審の挙示する証拠によつて十分に認定できるのであり右認定された状況の下においては右土地は家庭菜園の域を出ないもので農地に該当しないと認めるのが相当であるから原判決には所論の如き違法なく論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)
よつて民事訴訟法第四〇一条第八九条第九五条により主文の通り判決する。
この判決は全裁判官一致の意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)